西の狼













「………………旅…………………?」




レオンは一瞬魔王が何を言ったのか分からなかった。
だが魔王はつらつらと話を続ける。




「これが、魔界の地図だ。それと、金も幾らか入っている。後は…治療薬か。重傷を負ったら使え。」






魔王はそう言って革袋をレオンの前に置いた。



「……えっと………?」




「私はただお前の修行を手伝うつもりも無いし、時間も無い。それならこの魔界を巡った方が効率が良い。」





魔王はそう言いつつレオンに向けた右手に魔力を集めている。



「な、魔界を巡るって………!?」




「静かにしろ。集中できん………」




次第に魔王の右手の魔力が膨れ上がっていく。

「…行くぞ。」










「え、あ…ちょ………!?」





レオンが反論する間も無く、魔王はレオンとアザトホースを何処かへと飛ばした。






「………この魔界で、力に目覚めれば良いのだがな……」



「……そうだね…彼なら、大丈夫だよ…きっと………」












「…………うっ…………」




目を覚ましたレオンが最初に見た景色は、ひたすら続く深い森だった。





「ここは……」




「……魔王め、本当に飛ばしやがるとは……迷惑なこった……」




「アザトホース、ここは何処なんだ?」




「ここは、魔界の東の外れにある『ロイガーの森』だ。」



アザトホースの説明を聞きながらレオンは革袋を肩に担いだ。


「……しかし、旅するって言っても、どこに行けば良いのやら………まるで見当が付かないな……」




「ここから南に少し進んだところに、魔族が治める街があるはずだ。」



「街があるのか……なら、取りあえずそこに行くか……」