「あぁ……よろしく、アザトホース。」
「……ケッ……」
レオンは魔剣の柄を魔王から受け取った。
「……今ここに、レオン・ジス・ブラーニングを我が主と認め、我が名を以て盟約と為す………我が名はアザトホース……遥かな夢の大瀑布より、無の深淵へと流れ込み、虚空の彼方に座する者なり…………」
アザトホースが盟約を述べると、レオンの右手の甲に紅い紋章が浮かび上がった。
それは不思議な文字で綴られた魔方陣の様だった。
「………これで契約は終わりだ。アザトホースはレオンの魔剣となった。」
レオンはアザトホースを持ち上げたり軽く振ってみたりした。
そうしていると、少し違和感を感じた。
「…………軽い………」
そう、このアザトホース、見た目は通常よりも大振りな剣なのだが、その重さは見た目に反してかなり軽いのだ。
「それも、アザトホースが魔剣の中でもかなりの名剣と言われる所以だ。契約した主には、その身をまるで羽毛の様に軽くし、鬼神の如き力を与える。」
「………お前、凄い剣だったんだな……」
「ケッ、今更褒めたって何も出ねぇよ。」
「……はぁ、そうかい………それで、こいつの鞘はどこに?」
「あぁ、これだ。」
魔王はレオンに何か差し出した。
それは、アザトホースと同じ黒い本体に紅い縁取りがされた鞘だった。
「これは、低級の魔法ならば簡単に跳ね返す魔力を帯びている。実際はアザトホースの魔力を押さえ込む為のものなのだが……それの副作用だ。」
「……そんな力が……」
「あぁ。旅で何かと世話になるだろう。」

