「……魔界を自由に移動できる権利が欲しいんだ。それだけくれれば後は勝手に修行させるよ。」
「………良いだろう。通行証は発行させよう。だが、レム……お前はここに残れ。」
「!?」
魔王の言葉はレムを大きく揺さぶった。
しかしレオンはいたって静かなものだ。
「………何故…!?」
「決まっているだろう。お前が一緒にいては大した修行にならないからだ。敵は殆どお前が始末してしまうだろうし、いざという時の対処法も学べない。それではとても修行とは言えん。」
確かに魔王の言葉も一理ある。レムもそれが分かるからこそ反論出来ない。
むず痒い感覚を噛み締めるレムに情をかけたのか、次に魔王が放った言葉は意外なものだった。
「……だが、丸腰のままで放り出す訳にも行くまい……こい、レオン。」
「は、はい……」
レオンは魔王に言われるままにその後に着いて行った。
しばらく歩いた先は、武器庫の様だ。
一緒に来ていたアルナスが扉の鍵を開ける。
扉が開くと魔王はさっさと奥に行ってしまった。散在する武器の間を縫って何とかレオンは魔王に追い付いた。
「……これをやろう。」
そう言う魔王の前に目を向けると、レオンが見たものは台座に刺さって鎖に巻かれた剣だった。
その刀身は黒い刀身に縁が紅く、柄や菱形の鍔の部分も同じ様な配色がされている。
その剣からは、禍々しい魔力が感じられる。
「……これは…」
「魔剣アザトホース……我が魔界屈指の名剣だ……」
魔王は剣に近付いて柄に手を伸ばした。
鎖はいとも簡単に弾け飛んだ。
魔剣を握った魔王はそのまま魔剣を台座から引き抜いた。

