「……準備をしろ、レム。準備が済んだら始めるぞ……」
「あぁ。」
レムと魔王は部屋の両脇の壁沿いに立った。
二人が同時に魔力を放つと、二人の体から漏れ出た白と黒の魔力は床の溝を伝って魔方陣を描いていく。
その魔方陣が完成したかと思うと、魔方陣が灰色の光を放ち始めた。
「レオン君、この魔方陣の中央に立ってくれるかい?」
「あ、うん……」
レオンは言われた通りに魔方陣の中央に立った。
「……始めるぞ……」
「……行くよ、レオン君……」
二人は魔方陣に更に魔力を注いだ。
それに合わせて魔方陣の放つ光も強くなっていく。
「「……時渡り、発動……」」
魔方陣が一際強い光を放った。
その光の奔流は魔方陣の中央に立っていたレオンを飲み込んだ。
「うわ……ッ!?」
その強烈な光の前にアルナスは目を開けていられなかった。
部屋の中を暴風が吹き荒れ、その暴風が収まると共に光も薄れて行った。
「く…ッ……終わった、のか……?」
少しずつ目を開けたアルナスの目には、煙で覆われた魔方陣の姿が飛び込んで来た。
「…これは……あの人間の子供は…!?」
レオンの姿が見えないことに気付いたアルナスが魔方陣に駆け出したその時、煙の中に何者かの姿が浮かび上がった。
アルナスは思わず足を止めてその影に目を凝らした。
「……誰だ……?」
その影は明らかにレムのものでも、ましてや魔王のものでも無かった。
「…誰なんだ…お前は…!?」
そこにレムと魔王が戻って来た。
「……どうやら、成功したみたいだね。」
「…無論だ……」
「……成功、したのですか…?」
「あぁ……見ろ。」
魔王は静かに煙の中を指差した。
アルナスは魔王が指差す先を辿って視線を煙の中に向けた。

