アルナスは震える右手で額を覆って溜め息を漏らした。
「……馬鹿なことを……約束の皇子を敵に回すなどと……」
「それで、彼が戦火の巻き添えを食う前にガルディアに会わせておこうかと思ってね。尋ねたんだ。」
「……賢明でしょうな…では、魔王様を呼んで参ります。」
アルナスが魔王を呼びに行こうと立ち上がった。
その時、静かに部屋のドアが開いた。
「その必要は無い。」
扉を開けて入って来た人物にアルナスは目を丸くした。
「……魔王様…!?」
レオンはその男から目を離せなかった。
そうしなければ、自分が知らぬ間に切り捨てられていそうな気がしたからだ。
レオンがまっすぐ視線を向けていた魔王は静かにドアを閉めて空いているソファに腰掛けた。
アルナスも魔王が座ってから腰を下ろした。
「……久しいな、レム……」
「あぁ、本当に…懐かしい……」
「……話は概ね理解している。その子供に力を貸せと言うのだろう……?」
「……話が早いね…そう。彼が勝つには、今のままでは無理だ。だけど、僕一人では限界がある。だから、君にも力を貸して欲しいんだ……闇の大精霊である、君にね……」
「闇の……大精霊………?」
「そうか、レオン君には話して無かったね。彼が、闇の大精霊ガルディア……創世の大精霊の一柱だよ。」
「……そうなんだ……」
「……生憎だが、俺はその子供に力を貸す気は無い。」
「……やっぱり、そう言うだろうと思ったよ……それで、物は相談なんだけど……」
レオンは食い入る様にレムの言葉を聞いていた。
「……彼を、魔界で修行させてくれないかな?」
そのレムの言葉に、レオンはおろかアルナスまでもが我が耳を疑った。

