西の狼




自室に戻ったアルナスは一人考えに耽っていた。



「…光の大精霊、レム……この魔界に、一体何の用があるというのだ……」



そこに、衛兵がやって来た。


「アルナス様…」



「どうした。」



「それが……館の前に、妙な奴等が……」



「妙……とは?」



「白い炎を纏った羽を生やした男と、小さな子供が……」



「……白い炎…だと……まさか……」




「……あの……アルナス様…?」



「……その二人を客室に通せ。」



「は?」



「俺が直接会う。」



「え…そんな…!?」



「構わん。早く行け。」


「あ…はっ!」



アルナスに睨まれた衛兵は踵を返してさっさと部屋から立ち去った。



「……まさか、直接来たのか……それともただの別人か…?……まぁ、会えば分かることか……」


アルナスは部屋を出て客室に向かった。その腰には、二振りの剣が提げられている。







「……ねえ、レム……」



「……何かな、レオン君?」


レオンはレムの後に着いてこの館……レムが言うには魔王の館らしい……にやって来た。その玄関で見張りらしき男に足止めされたが、すぐに中に通して貰うことが出来た。

二人は客室に通された。今は、じきに誰かが来るというので大人しくソファに腰掛けて待っているのだ。




「……ここ、本当に魔王の館なの?」


「…そうだよ。どうして?」


「……いや……」




そんなとこにこんな簡単に入れるのかなぁ…




レオンの疑問は尽きない。



しばらくして、部屋の扉の一つが開いた。入って来たのは、黒い鎧に紅いマントを羽織った紅い髪に灰色の瞳の男だった。


男は向いのソファに腰掛けて二人と向き合った。