「……部屋の鍵は、かけられていましたが、窓は……」
ダリルは大きな窓に近寄って鍵を見た。
「……かかっていますか……では、一体どこに……」
ダリルは主のいない部屋の中で、ただ一人佇むしか出来なかった。
「…………フフフ……」
ほの暗いランプの灯と月明りが照らす室内……ランプの灯は二つの人影を照らしていた。一つは椅子に腰掛けて本を読んでいる。もう片方は楽しげにクルクルと両手を広げて回っている。
「……どうかしたのかい、アルシア?」
座っている人影が踊っている人影に尋ねた。
「フフフ……聞こえるんだ…大きな光が、唄を歌ってるのが……」
踊る人影は止まらずに答えた。
「…そう…楽しくなりそうかい?」
座っている人影の問い掛けに、アルシアは今度は踊るのを止めた。
「……うん……これから、沢山面白いことが始まるみたい…いっぱい、いっぱい……」
「……そう…」
「…………それでね、ヴァルキオ……」
アルシアの声が少しだけ低くなった。
「…………」
「………最後は…………皆死んじゃうんだよ………ボクも、ヴァルキオも……」
「………そう……」
ヴァルキオは椅子から立ち上がって窓辺に近寄った。空には明るい満月が浮かんでいる。
ヴァルキオは腰の剣の柄に手を添えた。
「………それは………」
ヴァルキオは自分でも分からぬ内に笑っていた。
「………楽しみだ…………」
空には星一つ無く、暗闇を照らすかの様に満月が浮かんでいるだけだった。

