「……旦那様は、ブラーニング家歴代最強と呼ばれる程のお方です。ですが、レオン様は貴方よりも優れた力をお持ちです。剣技はもとより、魔法に関しては頭一つ飛び抜けている程です。」
「…そうか……」
「……このままでは、本当に十歳にも満たない内から戦場に立つことになりかねません…私は、レオン様の身にもしものことがあったらと思うと……」
「…ありがとな、ダリル。だが、だからこそお前に鍛えて貰ってるんだ。あいつは、俺なんかよりも遥かに強い。魔力も桁外れだ。だが、それが危うさでもある。」
「……旦那様…」
「……あいつを、強くしてやってくれ。」
「……御意……」
ダリルは少し涙声で答えて部屋から立ち去ろうとドアノブに手をかけた。
「そういや、ダリル。」
その時ガラルドがダリルに声をかけた。
「……はい?」
「……もう、剣は持たないのか?」
ガラルドのその一言で、ダリルは険しい顔になった。ダリルはドアノブから手を離してゆっくりと振り返った。
「……私が剣を置いたのは、私が剣を恐れたからでごさいます。剣を握っている間は、自分が人間だということを忘れられます。ですが、私はある時気付いてしまった……」
そう言うダリルは、思い出すのも辛そうだった。
「……私も、単なる人殺しだということに…それに気付いてからは、私は二度と剣は持てなくなってしまいました。」
「……そうか……」
そう言うガラルドも辛そうに顔をしかめた。
「……しかし、少し勿体ない様な気もするな…かつては、剣聖と呼ばれた程の剣士だったのに……」
「……そんなもの、何の役にも立ちませんよ…戦場では、実力が全てですよ。旦那様にも、お分かり戴けると思います。」

