西の狼



「それは、海路を使います。」


「海路…『シルバリス教導団』ですか…」


そう言うガラルドの顔には、自然に笑みがこぼれていた。


「…懐かしいですか?」

「…えぇ……なるほど。確かに、アイツらならどんなものでも安全に運んでくれることでしょう。」


「私も、そう思っています。」




そこに、扉を開けて兵士が入って来た。


「ご報告申上げます。アイナ様が、ガルハイド共和国の大使達を連れて参られました。今、応接間にてお待ち戴いています。」


「来ましたか…ここへ通しなさい。」


「はっ。」


兵士はすぐに部屋から出て行った。



「……恐らく、アイナからも同じ様な報告なのでしょうね……」


「…さて……それは、どうでしょうな…」


「……?」


女王はガラルドの言ったことの意味が分からなかったが、考える前にアイナが大使達を連れて部屋に入って来た。


「……帰還が遅れて申し訳ありません。女王陛下……」


「いえ。任務ご苦労でした。では、報告を聞きましょう。」


「はっ。陛下よりのご使命を賜り、我が紅薔薇騎士団を率いてガレット森林地帯へと赴きました。その道中、炎の大精霊ボルカニアの使いと名乗る精霊と遭遇致しました。その時に、これを渡されました。」


アイナは懐から指輪を出して女王に見せた。

「それは?」


「『焔獄の指輪』と言います。炎の大精霊自ら創造した魔導具だそうです。」


「大精霊自ら、ですか……やはり、ブラーニング卿の報告と似ていますね。」


「やはり、ガラルドのところにも現われたのか。」


「あぁ。もっとも、俺は風の大精霊の使いだったがな。」


「では、お前も何か魔導具を受け取ったのか。」


「あぁ。俺のは、『裂界の指輪』だそうだ。こっちも、風の大精霊自ら創造した魔導具らしい。」