「……何なんだ、あの異常な魔力の圧縮率は……?」
その光線は、通常では考えられない程の魔力が圧縮されていた。
ケルビンがその謎の光線に疑問を抱いていると、その光線は今度はアイナ達の遥か後方の帝国兵達を次々と射抜いていった。
「開門!!」
アイナが声を上げると、城壁の城門がゆっくりと開いた。アイナ達はその城門の隙間に滑り込んだ。アイナ達が入り切った直後に城門は固く閉ざされた。外での音も、今はもう聞こえない。
「……おい、アイナさんよぉ…あれは一体何だ?」
「何か?」
「あの城壁の奴だ。あんな、異常に圧縮された魔力は初めて見た…あれは、一体何なんだ?」
「……あれが、出発する前に話した魔導具……『グランガウル』…古代サラドリア語で、『静かなる嵐』を意味するものだ。魔力を圧縮し、それを撃ち出す魔導具だ。」
「……あれが……」
「…さぁ、まずは我が主に会って戴きたいのだが……」
「……えぇ。構いませんよ。こちらも伺うつもりでしたから。」
「そうか。お前達は屋敷に戻れ。ご苦労だったな。」
紅薔薇騎士団は、アイナに言われた通り屋敷に戻っていった。
「……では、行こう。」
アイナはホーリアをゆっくりと進めた。クライス達も同じ様に進んだ。
途中でアイナから聞かされた話では、自分達は城に向かっている様だ。その途中に通った道では公国の民だろうか、多くの人々がアイナに声をかけていく。アイナも、その声に丁寧に答えていた。
「…人気なのですね…」
クライスは感嘆の声を漏らした。
「私達四大卿は、先の大戦で公国を各国から守り抜いた家だからな。民から見れば、英雄の様に見えているのだろう。」
「大戦……『十年戦争』ですか……」
「あぁ……あれは、酷い戦いだった…」

