「……頼もしいことだ……」
その様子を見ていたアイナもニナの食べっぷりには驚いた。勿論、クライスの怒り様にも肝が冷えたが……
「…時に、ケルビン…と言ったか。」
「ん?」
アイナはクライス達のテーブルに近付いてクライスに声をかけた。
「あぁ。そうだが、何か?」
呼ばれたケルビンはまるで親しい友人と会話するかの様な気さくさで答えた。横のクライスは少しケルビンに目配せしたがすぐに食事を再開した。
「君は、弓を使っていたな?」
「あぁ、俺は弓兵だしな。それが何か?」
「……良かったら、公国の武器を使ってみないか?」
「……公国の…武器?」
「あぁ。」
「…それは、弓なのか?」
「正確には弓ではないが。その類の魔導具だとは聞いている。」
「……聞いている?」
「私も直接触れた訳ではない。だが、超長距離戦用魔導具だとは聞いている。」
「……いいね…そいつは、面白そうだ。それは、今ここに?」
「いや。本国に保管されている。着いたら見せよう。」
「あぁ。是非とも見てみたい。」
「では、その様に取り計らおう。」
アイナはそう言って席に戻った。
「……公国の魔導具ねぇ…まさかこの手で触れる日が来るとはなぁ…人生何があるか分からねぇもんだ……」
ケルビンはコップを傾けながら不敵に笑った。しかし誰もその顔を見てはいなかった。
それから一時期程が経って、アイナ達は出発の支度を終えていた。野営も綺麗に畳まれている。
「……良し、では公国に向かうぞ!」
アイナが先頭に立ち、その後ろにクライス達、そのまた後ろに紅薔薇騎士団と続いていた。一行は公国へと馬を走らせた。

