「では、客人も揃った。朝食を始めよう。朝食が済んだら、野営を畳んで公国に向かう。今の内に腹を満たしておけ!」
「おぉぉっ!」
アイナの言葉に部下達が雄叫びで返したかと思った次の瞬間には、もう目の前の食事を貪っていた。
「……はは…これはすごいな……私達も戴こうか。」
クライス達もアイナの部下達に目を丸くしはしたものの、かなりの食べっぷりだった。特にニナが、その小さな体のどこかに異次元でもあるのではないかと言わんばかりに食事を平らげていく。
「……ち、ちょっとニナ……」
見兼ねてアリアが勢いを鎮めようと声をかけたがそれも無駄そうだ。
「……はぁ……」
呆れる三人をよそにニナはどんどん目の前の食事を胃に納めていく。
「おかわり、沢山ありますからね。」
と、ニナが平らげる度に笑顔でおかわりを持って来ていた食事係の女性も次第にその表情が凍り付いてきた。
「……はぁ……仕方ないなぁ…」
そんな様子に見兼ねてついにクライスが腰を上げた。
このままじゃ、ランスリッター卿の部下の方々の文まで食べてしまいそうだし………仕方ない。
「ねぇ、ニナ?」
クライスがまずは優しくニナを呼んだ。しかしニナは見向きもせずに食べている。
「…………」
そんなニナに次第に怒りが溜まってきたのか、クライスは剣を抜いて床に突き刺した。
「……バラバラになりたいかい?」
「はい、すいません。許して下さい。もうしません。」
クライスが静かに呟いた瞬間にニナは食べるのを止めてクライスにまっすぐ向き直って正座していた。
「……うん。素直で宜しい。」
クライスは剣を鞘に納めてまた何事も無いかの様に席に着いて食事を再開した。アリアとケルビンは始めから席で恭しく食事していた。

