「…クライス…」
「…何だい、ケルビン?」
ケルビンは珍しく険しい顔でクライスを見つめていた。さっきのことでしこたま怒られるかと思い身構えたクライスだが、クライスが口にしたのは予想だにしなかった質問だった。
「…お前、どうやってここに来たか覚えてるか?」
「…………は?」
あまりに予想外だったためクライスは気の抜けた返事しか出来なかった。
「いや、だからよ……俺達は、どうやってここに来たと思う?」
「……さぁ……」
クライスの答えが予想通りだったのか、ケルビンはがっくりとうなだれてしまった。
「はぁ………ホントお前は、戦闘以外は抜けた奴だな……」
「……そうかい……?」
クライスの気の抜けた返事に、ケルビンはまたもうなだれた。
「はぁ………もう良い…とにかく、俺達は知らぬ間にここにつれて来られた。それは確かだ。」
「…まぁ、そうだね。」
「…信用できるのか?」
その瞬間だけ、ケルビンは声を潜めた。しかし反ってきた答えはまたも気の抜ける返事だった。
「……まぁ、良いんじゃないかな……」
「…………はぁ!?」
あまりにも気の抜けた返事にケルビンまでもがしばし言葉を失った。
「だから、信用しても良いんじゃないかな、って……」
「……はぁ……おいおい、頼むぜ小隊長。あんたがそんな気の抜けた態度でどうすんだよ………」
「…あの馬は、聖獣だよ…」
「そうか聖獣か……………つて!!はぁ!?」あまりにも突飛なクライスの発言に今度はケルビンだけではなくアリアとニナまでもが言葉を失った。
「…ニナは、多分分かってたんじゃないか?あの馬がただの馬では無いと……」
「…うん…確かに、他の馬とは、少し違うニオイがしたけど…あれが、聖獣のニオイ…なんだ…」
ニナは一人うなずいている。しかしケルビンは小さくニナが「…美味しそうだったなぁ…」と呟いたのを聞き逃さなかった。

