「…ここは…どこだろうか…」
気が付くとクライスは漆黒の闇の中に浮いていた。その感覚は、まるで海の中の様だ。
「…私は、一体…」
辺りを見回すと、遠くの方で淡い光が漂っていた。
「…あれは…」
ただ何となく見ていたクライスだが、その光は徐々に大きくなっていく。
「!なんだ…っ!?」
光は更に大きくなって、クライスを飲み込んだ。
「…ス……ライ……クラ…イス…」
遠くで、果たして自分を呼んでいるのかどうか分からない声が響いている。
……誰だ……私を…呼んでいるのか……?
「……クライス!!」
「……ッ!?」
クライスは自分を呼ぶ声に思わず飛び起きた。その結果……
……ゴン……ッ…!!
「ッ!?」
「だっ!?」
クライスの頭と、クライスを呼ぶケルビンの頭が……
盛大に…火花を散らした。
「……ッ…!?」
「……うぉ…っ!?」
頭を抱えて二人は悶えた。
「……大丈夫?二人共……」
そんな二人を見兼ねてニナが声をかけた。その側には、二人を心配そうに見るアリアもいた。
「ッ……あ、あぁ…済まないな、嬢さん…おい、クライス…大丈夫か…?」
「……あぁ…お陰で目が覚めたよ……ここは…?」
痛む頭を上げて回りを見回そうとしたクライスに後ろから声が聞こえた。
「我々の野営地です、クライス殿…」
その声にクライスは素早く振り返った。その先には、ホーリアと佇むアイナがいた。
「…ランスリッター卿…」
「…頭は痛みますか?随分勢い良くぶつけたご様子だが…」
「え、えぇ…申し訳ありません…」
「いえ…今はまだ夜中です。今日はこのテントでお休み下さい。では、また明日…」
「えぇ。ありがとうございます。」
アイナとホーリアは静かにテントから去って行った。

