西の狼

「…お前達が、共和国の大使だな?」

突然人の言葉を話す狼にアレン達は驚愕した。

「狼が喋った…!?」

グランの言葉が失言だったのか、狼は心なしか眉間に皺を寄せている様にアレンには見えた。

「…悪いか?」

「あ、いや…その…」

グランは狼の鋭い眼光に完全に射竦められてしまった。

「いや、部下が失礼致しました。私は、ガルハイド共和国の大使で、名をアレン・クルーガーと申します。」

「俺はガリオだ。これでもれっきとした聖獣だ。」

「聖獣…実物を目にするのは初めてですが…確かに、何か高貴な魔力を感じますね。」

「聖獣だからな。さぁ、こっちだ。」

ガリオはそう言って野営の方に歩いて行った。アレン達もその後に付いて行った。野営に入ると、回りから視線を注がれたが、ガリオがさっさと行ってしまうので気にせず進んだ。

「馬はここで降りろ。おい、この方々の馬を繋いでおけ!」

ガリオが命令すると部下らしき兵士達が素早く行動した。更に進んで行くと、テントに着いた。

「この中で休んでいてくれ。じきにガラルドも戻って来る。」

ガリオはすぐにテントから立ち去ろうとした。

「あ、お待ち下さい!」
しかしそれをアレンが呼び止めた。

「何か?」

「ここは、襲撃されはしないのですか?」

「あぁ。あの時の追っ手以外の帝国兵はもう片付けたからな。」

「!?」

ガリオは何でも無い様に言い放ってテントから立ち去った。

「…流石は、大陸最強のサラドリア公国の騎士団…抜かりは無い、か…」

「えぇ。それに先程すれ違った時に見たのですが、背中のマントに紋章が描かれていました。」

「どの騎士団の人間だ?」

「…あの方は、サラドリア公国の四大貴族の一つ、ブラーニング家のご当主でございます。」