西の狼

「…ここまで夜通しで走り続けが…何とか間に合いそうだな…」

「…俺が先行して様子を見て来よう。」

「あぁ、頼む。」

ガリオは地面を蹴って走って行った。






「…これは…」

渓谷の入り口に差し掛かったガリオは、不意に渓谷全体から不吉な感覚を感じ取った。

「…上に上がってみるか…」

ガリオは足に風を纏わせた。上空高くに舞い上がると、渓谷の先の方から数人の騎士らしき影が見えた。

「あれが、大使の一団か…ん、あれは…」

ガリオがふと見た先には、渓谷の上にいる人影を見つけた。

「…帝国兵か…これは急がねばならんな…取りあえず戻るか…」

ガリオは偵察も早々と切り上げてガラルド達の野営に戻った。

「どうだった?」

「まずいぞ。帝国兵達が待ち伏せしているようだ。」

「待ち伏せ…?」

「あぁ。通りかかったところを、一網打尽といった算段なんだろう。このままでは、大使の一団が全滅してしまう…だが、今は進むことは、難しいだろうな。」

「…何かあるのか?」

「この渓谷には、何か不吉な呪いがかけられている…」

「呪い…!?」

「あぁ。恐らく精霊達の仕業だろうな…だが、あれでは手出しが出来ない…」

「…とにかく、一度渓谷に行こう。お前ら!野営は残しとけ!今から渓谷に入るぞ!」

部下達から色々な声が聞こえたがそれらを一切無視して歩を進めた。程無くして、ガラルド達は渓谷の入り口に到着した。

「…確かに、嫌な感じがするな…」

渓谷の入り口に到着した途端、ガラルドは言い知れぬ不吉な感覚を感じた。

「…さて、どうしたもんかねぇ…」

その時、ガラルドは何か気配を感じた。その方に振り向くと、そこには深緑色のロープを纏った老人が杖をつきながら立っていた。

「…おい、爺さん。ここは危ねぇからとっとと家に帰りな。」