西の狼

「…本当…?」

「あぁ。お父さんも、きっと前みたいに一緒遊んでくれるようになるよ。」

「…うん…」

落ち着いたのか、レオンは笑顔になった。

「ねぇ、もっとバイオリンが聞きたい。」

「…うん。じゃあ、何か弾いて…」

青年がバイオリンを手に立ち上がろうとしたその時、遠くから誰かがレオンを呼ぶ声がした。

「あ…家の使用人だ…」
レオンはひどく残念そうだ。

「なら、もう戻らないとね。」

「…でも…」

「バイオリンなら、また弾いてあげるから。さ、もう戻った方がいい。」

「…うん…それじゃぁ…」

レオンは声のした方にかけて行った。その小さな背中が見えなくかると、青年は静かにベンチに腰を下ろした。
「…ガラルドさんが国を離れるのか…よほど重要なことなんだろうけど…何か分かるかい?」

青年は誰もいない空間に向けて言った。すると青年の目の前に小さな精霊が姿を現した。背中には四枚の虫の様な羽が生え、髪と瞳は薄い蒼色。服は白を基調とした所々に蒼の装飾がされた綺麗な服を着ている。

「共和国と連邦が帝国の奇襲で打撃を受けたのよ。それで、唯一帝国の奇襲を奇襲で迎撃した公国と同盟を結ぶための大使を送ったらしいわ。ガラルドは、その内の一人の護衛で出て行ったのよ。」

「そんなことが…もう一人の方は?」

「アイナが向かったらしいわ。」

「へぇ、あのアイナさんが…なら心配いらないかな…」

「えぇ。まだ貴方が動くべき時ではないわ。それまでは、慎重に行きましょう。」

「…そうだね…」

青年はバイオリンをケースにしまって公園を立ち去った。さっきまでいた精霊は、いつの間にか消えていた。