西の狼




「私も、まさか実在するとは思っていなかったもので……あいにくと、詳しい資料が見つからなかったのですよ」





「…………はぁ……最後はやっぱり自分の足が頼り、か………」



「すいませんねぇ……ですが、そう慌てる必要も無さそうですねぇ……」





ジブリールはそう言いながらも、視線はレオンではなく、森の中の一点を見つめている様だ。



レオンとジブリールはゆっくりと、脇に置いてある剣に手をかけた。




「………誰だ………」



レオンもそこで何かの気配を感じ取って、声をかけてみた。



「……そう敏感にならずとも、危害は加えませんよ…」


レオンの言葉に応えたつもりなのか、二人が見つめる先から一人の男が姿を現した。




月明りに照らされたその男は、シルクハットに黒マントとタキシード、手には先の曲がった柄のステッキという、この森の中ではかなり違和感を覚える恰好をしている。


肝心の顔は、シルクハットの影で見ることが出来ない。



「………なんだ、お前は……?」



「ワタシ、ですか……そうですねぇ……」



男は手にしたステッキをいじりながら、不意に頭に被ったシルクハットに手を止めた。


「………フム………そうですね………取りあえず、帽子屋とでも名乗っておきましょうか」


「帽子屋……?」



「えぇ。まぁ、名前なんてどうでも良いのですよ。私は、警告をしに来たのでね……」



「……警告、だと?」




「貴方方は、ワルキュリアの一族を探していますね?」




「あぁ………」



「ならば、これをお持ち下さい」



男はそう言ってステッキを振った。




すると何も無かったレオンの目の前に突然何かが現われた。