西の狼




「な、なんだアレは……中から、出て来たのか……?」





「………ようやく現れましたねぇ……レオンさん、あれは、取り込まれた女性の誰かではないのですか?」





「そうか!取り込まれた体内から突き破って来たということか!」



「えぇ、恐らく……一人だけ出て来たのか、或いは……全員の力を掻き集めたのか……」



「とにかく、後はあのドラゴンを倒せば……」


レオールがそう言って剣を構えた、その手を、ミカエリアが止めた。




「良く見て下さい……もう、その必要もないでしょう………」




「何……?」


ミカエリアに言われたレオールはドラゴンを見た。





すると、ドラゴンは淡い光を放ちながら、徐々にその体を崩壊させていた。



「………魔力が尽きて、形を維持出来なくなったんだな。哀れなことだ………」



レオンはクロガネを戻した。

ロジャーもドラゴンから降りている。





さっきまで戦っていたのが嘘の様に、その姿は消えていた。


その代わりに、傷付いた領主が息も絶え絶えに立っていた。




「………ようやく、敵が討てる……ここは、私に任せて貰おうか……」









レオールが殺気を隠しもせずに領主に歩み寄ったその時………









「それは困りますねぇ……彼には死なれては困るんですよ………」




それは、ミカエリアの声だった。



その声に答える様に、どこからか現われた騎士らしき装束の一隊が領主とレオールを取り囲んでいた。



その騎士の盾には、天秤と剣の紋章が描かれている。


レオールは、その紋章を見て戦慄した。




「!?『天刑執行騎士団』……!?なぜ、ここに……ッ!?」