西の狼




「………妹………?」




「私は妹を取り戻す為にあらゆる手で探した………その時、領主から声をかけられた。その時に、私は妹を突き付けられた……」




「それで、自警団を結成したのか……あの男達は、元々は領主の部下なのか?」



「彼等は、ただの盗賊だった。それを金で雇い入れたのだ。もっとも、既に私が殲滅したのだが………」



「じゃあ、今領主を守っているのは………」



「全て私の部下………領主に家族を奪われた者達だ」




「………皆、被害者か……」



三人は、走り続けてようやく領主のもとに辿り着いた。





領主は、黒く輝く魔方陣の上に立っていた。


側には、自警団の騎士が倒れている。

既に事切れているのか、ピクリとも動かない。




突然の侵入者に領主はゆっくりと振り返ったが、その顔はもう人間のそれでは無くなっていた。



目は紅い水晶の様に怪しげな光を湛え、肌は紫色に変色している。


「………レオール……侵入者を捕らエたのカ?」



レオンは領主の言葉遣いに顔をしかめた。



既に口調が片言になってしまっている。


徐々に人間では無くなっているのかも知れない。


「私は、ずっとこの時を待っていた……妹の敵を討つこの時を!!」



レオールは叫ぶと共に剣を抜き放った。


同時に放たれた黄金の槍が、領主目掛けてその軌跡を伸ばしていく。





黄金の槍は領主に吸い込まれる様に突き進んで、領主に命中して煙を上げた。








煙が晴れると、無傷の領主が立っていた。



「何!?」



「グハハハハッ!!貴様の陳腐な槍など、私が食らう訳が無かろうが!!!」