「並の魔法使いでは、扱うどころか見ることすら叶わないでしょうねぇ……加えてあの剣術……一体どこまでデタラメなのか……」
ミカエリアはただ溜め息しか出せなかった。
レオンも、一瞬の隙も見逃すまいとレオールの挙動に目を向けているが、レオールは仕掛けては来ない………どうやら本当に足止めだけが目的の様だ。
「………どうするか……早くしないと、イレールが……」
その時、レオールの後ろにそびえる館から、天高く伸びる光柱が伸びた。
「な、なんだあれは……ッ!?」
「あれは………かなり濃密な魔力を含んでいる様ですが……」
「儀式が始まった様だな……」
「何!?」
レオールの言葉は、事態が最悪の展開へと推移したことを示していた。
「儀式が始まっただと……じゃあ、イレールは……」
「………既に、儀式の為の生け贄に……」
二人の肩に絶望が重くのしかかった。
更に目の前には今までで最強の敵が道を阻んでいるのだ。
イレールを救うことは、もう絶望的に感じられた。
だが、そんな二人に一筋の光明が差した。
レオールが、剣を納めたのだ。
「な、なぜ……」
「………私は、ずっとこの時を待っていた……協力して貰いたい」
「…………何……?」
二人は、光柱を目指して進んでいた。
二人の数歩先を、レオールが走っている。
ほんの数分前までは敵だったこの男に従っているのは、事情があった。
「領主は、街の若い女性を生け贄としてさらっていた。その中には、私の妹もいたのだ……」

