「………私は、ずっと店にいましたが……」
「だろうな……俺も、アンタが犯人だとは思ってない……だが、イレールさんは、自分が本当の子供じゃないと気付いていた……」
「……………そうですか…………」
主人はかけていた眼鏡を外して目頭を押さえた。
「発狂していたから、本当に気付いているかは分からない。だが、間違いない。」
「……やっぱり、気付いていましたか……」
その言葉にレオンは顔をしかめた。
「………『やっぱり』………?」
「……あの子は、私達やお客様の前では明るく振る舞っていますが………夜中部屋の前を通ると、時折泣いているのですよ……」
「………そうだったのか……何にせよ、イレールさんは何者かに狙われているかも知れない。用心しておいてください。」
「はい。イレールを助けて戴いて、本当にありがとうございます。私達も、気をつけることにします。」
「お願いします。」
「……それで、そちらの方は……」
「あぁ、彼は一緒にイレールさんを助けてくれた人だ。ミカエリアと言う。」
「そうですか……ありがとうございます。」
「いえ、たまたま通りかかっただけですので………」
「ミカエリア様は、どちらの宿にお泊まりなのでしょう?」
「私は、まだ見つけていませんので……出来れば、こちらに泊まりたいのですが……」
「えぇ、勿論。まだ部屋はございますので、お好きな部屋をご提供出来ます。」
「そうですか……では、荷物を運んでおいて貰えますか?私は、彼と話があるので……」
「えぇ、かしこまりました。」

