西の狼



「……いちいち相手にするのは、少し面倒だな………」






若い男は、体を女性の方に少し傾けた。



隙を突いて、女性を連れて逃げようと考えていた。





だが、その時思わぬことが起きた。















「…………オヤオヤ、大の男が大勢で二人の男女を取り囲んでいるとは………情けない現場に出くわしてしまいましたかねぇ……」






それは、唐突に現われた男の声だった。







男は、銀髪にスカイブルーの美しい瞳で、かなりの長身だった。



右手には、少し長めの杖を握っている。




その立ち居振る舞いは、少しうさん臭いが掴み所が無かった。






「…………誰だ……?」





「ナンだぁ、テメェは……?」




突然現われた男は軽い足取りで若い男の前に立った。




「イヤイヤ、ただの通りすがりですよ……少々世話焼きですがねぇ………」




「この…訳分かんねぇヤロウが……!!」




痺れを切らしたのか、一人の男が男の背後から剣を持って切り掛かった。









「………隙だらけですねぇ………」





男はゆっくりと切り掛かって来た男に向き直った。




そして、杖を相手の足に引っ掛けた。






「うぉッ!?」






その結果、切り掛かった男は当然足をもつれさせて盛大に転んだ。






(………この男……タダものじゃないな……)



はたから見れば、ただ杖を引っ掛けただけにしか見えなかったが、その動きには一切無駄が無かった。



「ぶ、このヤロウ………ッ!!」




「ハハ、逃げますよ!少年!」



「あ、あぁ………」