「さすがに竜王ともなれば、魔力の流れを読み取る事など容易いか?」
「………お前には劣るさ………」
「しかし、聞いた時は随分驚いたものだ。お前がまさか生きた竜王だったなんてな。」
レオンは、デメテルの街で目を覚ました時に、ロジャーとマクリールからアグニの名と魔剣に封じられた経緯を聞いていたのだ。
「………いつかは言うつもりだったさ。だが、機会を逃しちまってなぁ……まぁ、良いじゃねぇか。」
「………そうだな……」
その時、近くから甲高い悲鳴が聞こえた。
「何だ……!」
「悲鳴みてぇだな……」
「……近かったな……行ってみるか。」
レオンは悲鳴が聞こえた方向に駆け出した。
人通りの少ない道の更に奥の路地裏に、複数の人影が集まっていた。
「へへ、こんなところで危ないぜお嬢さんよぉ……」
「嫌ッ、放してッ………!!」
それは一人の女性と、女性を囲む三人の男達だった。
女性の足元には、野菜などが入った籠が転がっている。
襲われているのだ。
「へへ、そう言うなって………仲良くしようぜぇ………」
男の一人が女性の両手首を掴んで壁に押し付けた。
「嫌ッ………誰か………ッ!」
男が女性の首元に顔を近付けた。
「大の男が三人がかりで、こんな路地裏で女を襲ってるとはな……情けない………」
「…………あぁン…………?」
男は女性の首元から顔を離して声の主を探した。
視界に捉えたのは、まだ若い男だった。

