翌朝、二人は揃って一階の食堂を訪れた。
「そういえば、料理は誰が作るんスかねぇ……」
「それは………主人、だろう……?」
「…………………大丈夫ッスかねぇ……」
二人は静かな不安を抱いて食事を待った。
「おまちどうさま!お食事をお持ちしました!!」
「な…………」
食事を運んで来たのは、なんと年若い女性だった。
茶色い髪と瞳に、エプロンを身に着けている。
「ごゆっくりどうぞ!」
女性は来た時と同じ様に笑顔で立ち去ろうとした。
「あ、あの……」
しかしロジャーが女性に声をかけたことで、再び女性が振り返った。
「はい?」
その笑顔は、いつでも眩しい。
「この料理は、誰が作ったんスか?」
「うちの母ですけど………」
「………ん?母………?」
「はい。」
「…………もしかして君は、あのご主人の………」
「はい。娘でございますが…………」
その言葉に二人は言葉が出なかった。
そんな二人の対応に女性が困っていると、奥から噂の主人がやって来た。
「どうしたんだい、イレール?随分遅いが………」
「あ、父さん……こちらのお客様が……」
「おや、あなた方は昨日の………どうかなさいましたか?」
「あ、いや…………てっきり、この宿屋はご主人一人だと思っていたもので………」
「あぁ、イレールに驚かれましたか?」
「あ、あぁ………」
「イレール、奥に戻ってなさい。」
「あ、うん………」
イレールは少しためらったが、すぐに奥に戻って行った。
主人が、二人と同じテーブルについた。
「………私は、もう三十年近くこの宿屋を経営しております。元々この宿屋は祖父母のものだったのですよ。」

