西の狼

「……なるほど……こうなるのか……」



「撃ってみたらどうッスか?」


「そうだな……」



レオンは弓矢を人気の無い森に向けた。




そして、ゆっくりと引き絞った弦を放した。




だが、弦から放たれた矢は、予想していたよりも遥かに速く鋭く森を突き抜けた。


射線上の木々を薙ぎ倒し、途中の岩を貫通して更に先の大岩を砕いた。




その弓矢と言うには余りに過剰な威力に二人は絶句してしまった。



「………これは、気をつけないといけないな………」


「………そうッスねえ………」














「が、がはっ………ッ!?」



「く、こいつ………何者なの……ッ!?」




ハイド達は突然やって来た男に全く歯が立たなかった。



男は腰に差した刀すら抜いていなかった。



それでも、その体に傷一つ負っていない。




男は服についた埃を払った。




「………三人がかりでこの程度か……まぁ、良いだろう。どうせここに居ても、いずれは殺されるだろう。なら、一度は外に出てみたいとは思わないか?」




「………何だと……?」





「………外に…出れるの……?」




それまで大した言葉を発さなかったアリアンが、その言葉にはしっかりとした意思を含めていた。



ハイド達はアリアンに注視した。




「………アリアン……お前……」




「答えて……」




謎の男を見つめるアリアンの瞳には、強い光が灯っていた。




「………この任務に協力するならな。」





「………………分かった……」




「な、アリアン!!」



アリアンはゆっくりと立ち上がった。




「………私、行く………」