西の狼



「……これから、どこに向かうんスか?」


「………そうだな………」





二人は、デメテルの街を出て、西に向かう街道の脇で火を囲んで野宿していた。




レオンが薪を火にくべる。




静かな夜空の下、火のはぜる音のみが木霊する。



「……街道をもう少し進むと、宿場町があるはずなんだが……」




レオンは袋の中から地図を取り出した。



「確か………あぁ、これだ。」




レオンは地図の上に目当ての街を見つけた。ロジャーもその地図を覗き込む。


「ここは……ハトホルッスか?」



「あぁ。取りあえずは、そこに向かおう。そこから先は、その時考えれば良い。あまり、長い道のりを考えても仕方無いしな。」




「そうッスねえ……そういえば、レオンさんは何か貰ったッスか?」


「ん、あぁ……これを貰ったな。」


レオンは袋の中から木の枝の様な物を取り出した。



「……これ、なんスか?」


「さぁ……“弓”だとは聞いたのだが……」

「え……弓ッスか?」



「あぁ……せっかくだし、使ってみるか………」


レオンはおもむろに立ち上がって木の枝を構えた。




「……確か、魔力を注ぐと形が変わると言っていたな……」


レオンは思い出しながら木の枝に魔力を注いだ。



少し魔力を注ぐと、さっきまで片手に収まる程の小ささだった木の枝が、大きな弓に形を変えた。




「……こりゃ凄い……便利なもんだ……」




「でも、矢はどうするんスか?」



「あぁ……確か……」



レオンは思い出しながらまた魔力を注いだ。
今度は、弓の弦に矢を番えた姿勢で、弦を引き絞った。


すると、レオンの魔力が圧縮されて一本の矢になった。