西の狼

「………」


ハイドはそう言われてアリアンを見た。


彼女自身はハイドを見てすらいないが、その辺りだけ魔力が濃霧の様に広がっていた。




「………ハッ、それもそうだ……」



ハイドは大袈裟に両手を上げて言葉を切った。

それきり横になって黙り込んでしまった。




「………はぁ……っとに、子供なんだから………」



女性は、小さくぼやいた。




……本当に、正直じゃないんだから……







「…………何か………来る…………」




「あん?」






アリアンの呟きにハイドが起き上がったその時、重い音を立てて部屋の扉が開いた。




そこにいたのは、見知らぬ男だった。




ハイドはゆっくりと立ち上がって男に向き直った。




「……誰だ、テメェは…いつも来る奴じゃねえな……」




「ハイド、アリアン、ヴェルズ………お前達をここから出してやろう。」




「……………」



アリアンは大人しくしているが、二人はそうはいかなかった。



「あぁ?………テメェ、何言ってやがる……」



「その代わり、お前達にはやることがある。ある人物を、襲って貰う。そいつは……」




「おい、何勝手に話進めてやがる……誰がテメェの言う事なんざ聞くかよ……」



「……聞く必要など無い。」




「………何だと……?」




「……お前達に、選ぶ権利など無い……」



「……ッ、テメェ……ブッ殺す!!」



「!ハイド!!っとに、もう……アリアン!!」




「………分かった……」



二人も、先に飛び掛かったハイドの後に続いた。




「……あくまでも逆らうか……ならば、力ずくで従って貰おうか……」