「………あぁ……」



「……だが、お前を責めるつもりは無いし、ましてや恨んでもいない。」



「………何故だ……?」



「……あの戦いの後、お前は一族の生き残りを、魔王の目の届かない山奥に逃がしただろう……」




「え、そうなんスか?」



「………我輩は、確かに魔王様に忠誠を誓った……だが、魂まで売った訳では無い。我輩には、同じ魔界の民を、殲滅する気にはなれなかったのだ……だから、アグニが捕獲されたと知った時には、驚いたものだ。」




「捕獲って……アグニさんがッスか?」



「…俺は、殲滅を指揮した奴を見つけたかった……逃がされたとは言っても、直接来たのは部下だったからな。結果、指揮をした奴は分かったが、俺はそのまま封印されちまった……次に目覚めたのが、レオンが来た時だった。」




「……そうなんスか…」



「……そう言えば、レオン君は無事か?」


「はい。二、三日休んでれば回復するそうッス。」




「そうか……しかし驚いたな。まさかレオン君があんな巨大なものを召喚するとは……あれも、ロジャーが教えたのか?」



「と、とんでもないッス!!あれは、レオンさんの力ッスよ!僕は、何も………」



「…そうか……やはり、彼は特別な様だな……全ては、聖櫃の為に、か………因果なものだ…」



「………あの……ヴォルカス様……?」



ロジャーは、急に黙り込んでしまったヴォルカスに恐る恐る声をかけた。


「………とにかく、ご苦労だったな。今日はもう休んでくれ。」


「それじゃあ、失礼するッス……」



三人は部屋を出て行った。一人残ったヴォルカスは、また窓際に立って街を見詰めた。

街は、夕日に照らされて美しく輝いていた。