≪悠優Side≫

「だから…万引きなんて止めろよ」

凌央は,私の目を見て言った。


私は,正直嬉しかった。

今まで,こんなにも私のことを

考えてくれた人がいただろうか。


でも半面,少し苛立った。

万引きなんて,くだらない

そう言った凌央。


私は万引きをして生きてきた。


万引きを否定したと同時に,


私の人生も否定された気がした。


凌央なんかに,私の気持ちはわからない。

私のことを見下しているだけでしょ?


同情なんかも,いらない。



私は,こみ上げる何かをガマンして

その場から逃げた。

凌央は,私の後を追ってこなかった。