…そんなことをひたすら考えていた。


んなこと考えるなんて、俺らしくない…




モヤモヤする感情をかき消すようにバイクの鍵を取り、俺は部屋から出た。




バイクに乗るのは好きだ。


とはいえ、
族に入ってるわけじゃない。


ただ走るだけ。



酒にもタバコにも手を付けない俺にとっての唯一の楽しみだ…







「 あら、樹 出かけるの?

もうすぐご飯よ?」


おふくろがキッチンから顔をのぞかせ、俺に声を掛けた



「 ちょっと走ってくる…、」



「 そう、

捕まるような真似するんじゃないわよ、」




俺は適当に返事をし、
玄関のドアに手をかけた。



「 あ!

樹、ちょっと待って!!」




おふくろが慌てて俺を引き止めた



「 …なんだよ、」


「 これ、岡本さん家に持ってって!」


そういって俺にタッパーに入った煮物を渡した。



「 作りすぎちゃったから、おすそわけしてきてちょうだい。」


「 はぁ?なんで俺が…、」


こんなダッセェこと…




「 どうせ1階に降りるんだから別に良いでしょ。

行ってらっしゃい!」



強引に押し付けられ、

しかたなく俺は下の階の102号室のチャイムを鳴らした…





「 は〜い、」


そんな返事とともにドアから顔を出したのは、


アイツだった…