「 …夏に向けてホラー小説を書き出したんだが…、どうも上手くいかなくてな…、」
俺がそう愚痴を零すと、夏海はとんでもないないことを提案した。
「 じゃあさ、恋愛小説を書いてよ!
そっちの方が断然 読みたいし!!」
「 ………。
俺は、恋愛沙汰に興味は無い。」
「 もう!そんな好き嫌いするから売れないんだよ〜」
俺の言葉に対し、そう言って拗ねる夏海。
…すると、突然
「 あっ!」
と、夏海が大声を上げ、
なぜか笑顔で窓辺に駆け寄って行った
何事かと思い俺も窓を覗いてみると、
彼女の視線の先には
上の階の不良 もとい、樹がいた。
目つきの悪いガキではあるが、実はこいつはいい奴だ。
以前、俺がどこかの不良どもにカツアゲされていた時に、助けてもらったという大恩があるのだ…
「 いっちゃん お帰りーっ!」
そう言って夏海は、いつもより1オクターブ高い声で樹に声を掛ける。
「 ……ただいま、」
そう素っ気なく夏海に返事をする樹。
「 きゃーーっ!!いっちゃんが"ただいま"って言ってくれたー!!」
樹が通り過ぎると夏海は興奮気味にそう叫んだ。
「 …おまえ、
樹が好きなのか?」
「 うん!大好きー!
でも、私の片思いなんだよね〜、」
口調は明るいが、どこか切なそうな顔の夏海
「 …そうでもないと、俺は思うがな。」
俺は、ぼそっと呟いた…
夏海は舞い上がりすぎて気付いていないが、
先程 俺は樹に睨まれた…。
これは、
おそらく樹も夏海に気があるということだろう……

