そうして広瀬さんは、大きく息を吐いた後、
まっすぐに結城さんの前に詰め寄った…
そして
「あんたが、さくらの恋人なのか…」
と、そう静かに尋ねた…。
「あぁ、そうだ…」
そう答える結城さんに、広瀬さんは握った左手を差し出した。
そして差し出した拳の力をゆっくりと緩めた…
その手のなかから、
銀色の鍵が零れた。
反射的にそれを受け取った結城さんに、広瀬さんはこう言った
「さくら荘104号室…
そこにあいつがいる…。
あいつは、ずっと待っている。あんたが来るのを…」
幽霊の少女は、
あの部屋で結城さんのことを待っている…。
広瀬さんはそう言った。
その言葉に、
結城さんは広瀬さんから受け取った鍵を持って走り出した…。
雨はもうすぐ
止みそうです…