店で倒れた彼女は、結城と佐伯が俺の車で病院まで連れて行った…。
俺は店に残された。
結城と佐伯に、結菜とちゃんと話し合えとそう言われた。
話し合えと言われたところで、
なにを話せっていうんだ…
そんなことを思っていると、カランと店のドアが開く音が聴こえた。
ドアの札は"close"にしている。
だから、この状況で入ってくるのは店の人間だけだ…
誰が入ってきたのかなんて、すぐわかる…。
顔を上げれば、びしょ濡れの結菜が居た。
「そーちゃん…」
結菜は酷く不安げな顔で俺を見てそう声を漏らした。
「…風邪引くぞ」
そう言ってタオルで髪を拭いてやる。
そのまま黙って拭かれていた結菜が、タオルの下で小さく呟いた…
「ねぇ、そーちゃん
"さくら"…って誰?」
その言葉に、体がびくりと震えた。
すると結菜が顔を上げ、まっすぐに俺を見て、もう一度口を開いた。
「あたしは、その"さくら"って子の変わりなの?」
今度ははっきりした口調でそう訊かれた。