そんなことを頭の隅で考えながら、佐伯君と一緒に駅の改札を抜ける…
雨は相変わらず降り続いている…
「 僕、傘 持ってるんで、由貴子さん一緒に入って行きませんか、」
佐伯君が傘を持っていない私を見て、そう言ってくれた。
…ほんと、
年下とは思えないくらいしっかりした子だ。
ありがたくその好意に甘えることにして、駅を出ようとしたところで 見知った子を見つけた。
「 桃ちゃん。」
その姿を見て、私は思わず声を掛けた。
佐伯君の片思いの相手である桃ちゃんは、私たちの姿を見てにっこりと可愛いらしく微笑んだ。
「 由貴子さん、佐伯さん、こんばんわ。」
ぺこりと頭を下げるその仕草が本当に可愛い。思わず私の頬も緩んでしまう…
「こんばんは。
桃ちゃん こんなとこでどうしたの?」
私がそう尋ねると、桃ちゃんは恥ずかしそうに
「 傘、持ってなくて…、」
と、そう答えた。
…この場にある傘は、
佐伯君の傘の1本のみ。
3人で一本の傘は、さすがにキツい…
というか、
明らかに私は邪魔者だろう…。
「 ちょうど良かった!
佐伯君が傘持ってるみたいだから、桃ちゃん 入れてもらいなよ。」
私がそんな提案をすると、桃ちゃんは顔を赤くし、佐伯君は驚いた顔をした。
佐伯君が口を開こうとしたのを、私が声を上げて遮った。
「 じゃ、私 彼氏ん家 寄ってくから、2人とも気をつけてね〜!」
雨が降るなか、私はそう手を振り 2人のもとから走り去った…
ちょっとわざとらしかった気もするけど、まあ いいか。
これが あの2人の付き合うきっかけになればいいのになぁ〜
と、勝手にそんな妄想をしながら、雨に打たれながらも私は彼の部屋に走った。