ざぁーっと、雨が音を立てて降り出した。
窓を叩く雨音。
それをかき消すように、
カランカラン
と、ドアのベルが鳴った。
向かい合っていた僕と店長は反射的に、顔をそちらに向けた。
ドアを開けて入って来たのは、結城さんと店の常連客の瑠音さんだった。
「さっきそこで会った。
ちょっと雨宿りさせてやって」
そう言って結城さんは瑠音さんをソファに座らせた。
雨は降り始めたばかりだったため濡れてはいなかったけれど、彼女はどこか寒そうに体を竦めていた。
店のブランケットを渡すと、彼女は「ありがとう」と弱々しく呟いた。
そして、
「あのね…、佐伯君に聞きたいことがあるの」
と、そう言った。
「僕に…ですか」
思いもしなかったその言葉に戸惑いながらそう返した。
なんだろうと頭に疑問が浮かぶ。
そして、先日の広瀬さんとのことを思い出した…。
それが彼女にも伝わったのか、瑠音さんは小さく笑った。
「…この前、佐伯君と一緒に居た人…」
「広瀬さんですよね」
「うん…」
どこか歯切れが悪いように、ゆっくりゆっくり彼女は言葉を紡いだ。