溜め息のあと、
「これ、あんたが後で掃除しろよ」
私たちの服から滴り濡れた床を見ながら、そう言った。
男はその言葉を聞き流すようにヘラッと笑い、再び私の手を引いた。
私は男に連れられるまま、店の奥の階段を上がる…
「ねぇ、」
あんたなんなの?…そう聞こうとした私の言葉は、男の言葉に遮られた。
「ここ、俺の家な」
私の言葉を遮って、男はドアを開く。
そこは下の美容室とは違い、普通のマンションの一室の様になっていた。
ここが家と言う男の言葉は本当らしい。
「まずは風呂だな」
男が私にそう言った。
「っ!!」
男のその言葉に、私は思わず身構えてしまった。
すると、私の反応を見て男は小さく笑う。
「そんなあからさまな反応すんなって。
大丈夫、なんもしねぇーから」
そう言って男はタオルを私の頭に被せ、濡れた髪をごしごしと優しく拭く。
「…このままじゃ風邪引いちまうだろ?」
「…う、ん」
…なんでだろう。
ムカツクって思っていても、なぜかこの男には逆らえない。
人に優しくされるのは慣れている。
媚び売って、優しくして、私に気に入れようとしている人はこれまでいっぱいいた。
それでも、
この男の優しさだけは、それらとはどこが違って感じた…。

