「…私、帰る場所ないの。
ねぇ、おじさんのとこに泊めてよ」
…それは、ほんの思いつきだった。
ムカツクこの男を困らせてやろう…
そう思って口にしたその言葉に、男はヘラっとした笑みを崩さず「いいぞ」と応えた。
「じゃ、行くか!」
「えっ、ちょっ」
男に手を引かれ、急に怖く思った。なにかされるんじゃないかって。
でも、
雨で冷えた私の体には、男の手の温かさが優しく思えて、
私に無理矢理傘を持たせて自分は濡れながら歩くその背中に、私の中の恐怖心が薄れてしまった…。
着いた先は、
小さな美容室。
男に引かれるまま店のなかに入と、なかには店員と思われる男の人が一人。
「また、拾ってきたのか」
その人が静かにそう言って、
私と、私の手を引いたままの男に、お店のタオルを放り投げた。
「まぁな」
男はまたへらりと笑い、
もう一人の方は、それを見て溜め息を零した。

