「 …なぁ、お前に聞きたいことがあるんだ 」
ふいに歩は真剣な表情をして私を見た。
『 なに…?』
「 お前、昔ここに住んでたんだろう?」
『 …さぁ、覚えてないよ 』
なにもわからない。
思い出せない。
歩にそう伝えると、彼は静かに話し出した…
上の階の男の子の知り合いに、このアパートに昔住んでいた人がいること。
その人が、生きていたころの私を知っているかもしれないということ……
歩の話を聞いているうちに、私はなんだか怖くなった。
生きていた頃の記憶が戻ってしまいそうだったからだ。
そうなればきっと私は消えてしまうだろう…。
…消えたくない
もっと、
ずっと一緒に…
一緒にいたいよ……