……私は夢を見た。
幽霊なのに寝るなんておかしいかもしれないけれど、時々ぼんやりと意識が離れる時がある。
それがただの夢なのか、生きていた頃の記憶なのか、私には確かめる術がない。
「おい、」
部屋の隅でその夢のことを考えていると、この部屋の主である歩が呼び掛けてきた。
顔を上げると、歩の顔が間近にあった。
「大丈夫か…?」
『…え?』
「苦しそうな顔してる」
そう言った歩も、随分苦しそうな顔をしていた。
『気のせいだよ。
私、痛いとか感じないし…』
実態のない幽霊の私は、
痛みとか、寒さとか…、そういったものを感じない。
笑ってそう答えると、歩は安心したように小さく笑った。
最初にのころより、歩はよく笑うようになったと思う。
表情が優しくなった……