『 私ね、最近此所に居ることが楽しいの…
不思議だよね……
死んでるのにね… 』
そう言って幽霊は、静かに笑った…。
その姿にそっと手を伸ばせば、
空気が揺れて、俺の手は空を切る……
『 このまま居ても、生き返れるわけもないのに…馬鹿みたいだね 』
珍しく真面目な口調で、幽霊はそうぽつりと言葉を零した…
「 成仏…したいのか?」
『 そりゃそうだよ…
歩だって、このまま私みたいなのが側に居られても迷惑でしょ?
…女の子とか部屋に連れ込めないしね。』
言葉の最後の方は、少し冗談っぽい口調だった。
無理していつものように茶化そうとしている姿が、痛々しい…
「 …連れ込むような女なんていないけどな」
『 瑠音は…? 』
「 アイツとはもう別れたんだ。」
別れた彼女の名前を出され、俺は冷たくそう言い返した。
…忘れたいのに、コイツはことあるごとに瑠音の名前を出す。
いい加減うんざりする。彼女の名前にいちいち動揺する自分自身に……
『 まだ好きなくせに… 』
「 好きじゃない!」
意地になって言い返した。
そんな俺を見て、幽霊は素直じゃないと笑う…
無邪気な笑顔に、心が軽くなる。
コイツと接している時
まるで、ぬるま湯にでも浸かっているような心地よさがある…。
…このままでは駄目だと思った。
この先きっと俺は
コイツに依存して、駄目になる……
「 成仏しろよ 」
『 できたらね 』
「 俺がさせてやる 」
コイツのためにも、俺のためにも、
早く成仏させないと…
そう思った……。
104号の俺
幽霊との終わりは
もうすぐそこまで
来ていた…