「 ん… 」



部屋の前にまで来ると、

抱えた彼女が微かに身じろいで、うっすらと目を開いた。



…そして、


「 きゃあああああっ!!!!」



僕と目が合うと、顔をみるみる赤くさせてそう叫んだ…


叫んだのと同時に体を動かそうとしたので、彼女を抱えていた僕はバランスを崩した


バランスを崩したまま倒れ、彼女が小さく悲鳴を上げた…




「 キャッ!!!」


「 …っ 」



僕が下敷きになったので彼女に怪我はないと思うけれど、

下になった僕を見て彼女は泣きそうな顔になった




「 さっ、佐伯さんっ…

す、すみませんっ、大丈夫ですか… 」


おろおろとした様子で僕を見る彼女を、僕は下からぼんやり見上げた…



倒れたときに打った頭が結構痛くて、思考が上手く回らない……




「 …佐伯さん……?」


返事のない僕を見て、森永さんは更に不安そうな顔した



「 …だ、大丈夫ですか…?」


もう一度そう訊かれ、今度は返事をすることができた



「 大丈夫です…

…えぇっと…、とりあえず降りてもらっていいですか…?」



倒れた時に僕の上に彼女が乗っている体勢になっていて、重くはないけれどいろいろとマズい状況だ…



僕の言葉に彼女は一瞬で状況を理解したらしく、また顔を赤くさせる



「 すみません…… 」


「 いえ… 」



小さく謝る彼女に僕も小さく返事をした…






こうして互いに小さな声が聞こえる距離なのに、


僕と彼女の距離はまだ遠い……