…夕方


バイトを終えてさくら荘に帰ると、


桜の木の下では、
住人の皆が思い思いにお花見を楽しんでいた…





「あっ!佐伯君!!バイトお疲れ様~!」


そう言って少し酔っ払った様子の由貴子さんが僕に声を掛けた



そして

「 ちょうどいいところに帰って来てくれて良かったわ 」

と、少し悪戯っぽく微笑みかけられた。




その言葉に状況が掴めない僕が首を傾げると、由貴子さん一階の縁側を指差した。


その先には、

縁側に座ったまま眠っている森永さんの姿があった…




「 桃ちゃん寝ちゃったみたいでね、部屋まで連れてってあげてほしいの。」


「 ……僕が、ですか?」



「 そう。

だって大人組はみんなお酒飲んじゃってるんだもん。


連れてく途中で落として怪我でもさせたら大変でしょ?」


そう言葉を続けられて僕は頭を抱えた。



確かにそうかもしれないけれど、



…僕だって仮にも男なわけで、


無防備な女の子を預けるなんてそんなのいくらなんでも駄目だろう…




そう思う僕に対し、由貴子さんは僕の思いを見透かしたように言う





「 大丈夫。

佐伯君のことは誰よりも信用してるから 」


にこりと微笑まれながらそう言われてしまえば、もうなにも言えなかった。