コップに注がれて配られたジュースを受け取り、口にしようとした時


ふいに部屋の中を振り返って見てみると、

部屋の中では、幽霊が陽の当たらない陰の方で膝を抱えていた…。


今日のコイツは他の住人が近くにいるせいか、自分から話し掛けてこようとはしない…


なんとなくだが、調子が狂う……




俺は縁側からそっと腰を上げて部屋の中に入ると、

幽霊は俺を見上げて不思議そうな顔をした。




俺はそんな反応も気にせず、手にしていたコップをソイツの前に置いた。


お供え物というつもりでもないけれど、
せっかくの花見なのになんにも無いのはさずがに可哀想だと思った…




「 オマエも飲めよ、せっかくの花見だぞ。」


『 …ありがとう 』


俺の言葉に幽霊は小さく笑う…


その隣りに腰を下ろし、さっき受け取った酒を開けた



甘い酒

この陽気も手伝って、溶ける様な心地良さを感じた……




「 此所の桜は、綺麗だな…… 」


小さくそう零せば、幽霊も頷く



『 毎年、綺麗に咲くの… 」


「 ……毎年って、オマエいつから此所にいるんだ?」


『 さぁ…、』


そう呟いてから、少し楽しげな声を上げた




『 …ねぇ、知ってる?

桜の花が美しく咲くのは樹の下に死体が埋まっているからだって… 』



「 よくある都市伝説だな… 」


『 ………。』


幽霊の言葉になにげなく返事をすると、ふいに幽霊が黙った…





「 …?

どうしたんだよ… 」




不思議に思った俺が声を上げると、

幽霊はそっと口を開いた……