…数分後、


私はいつもよりも短めな前髪になっていた…。



前髪だけ見ればかなり可愛いけど、顔は私だから絶対似合ってないと思う…



そんな少し複雑な気分のまま佐伯さんの部屋を出ると、廊下でいっちゃんママとばったり遭遇した。


「 あら、なっちゃん

…その前髪どうしたの?」


「 …あ、佐伯さんに切ってもらったんですけど… 」


似合わないですよね。

そう続けようとした言葉を遮るように、いっちゃんママが声を上げる



「 すっごく似合ってて可愛いわよ!佐伯君やるわねー!!」


「 …へ?」


思いもしなかった言葉に思わずまぬけな声が漏れる。





「 樹ーーっ!!

ちょっと来てみてーーー!!すっごくいいものが見れるからっ!!」


唖然となる私をよそ、にいっちゃんママは少し興奮したように202号室のドアに向かってそう声を上げる…


「 ちょ、や、やめてくださいっ!!」


私は慌てていっちゃんママを止めた。いっちゃんに見られたらと考えるだけで恥ずかしいのに、呼ばないで欲しかった…


そんな私の思いも虚しく、


「 …なんだよ。」

と、いっちゃんが廊下に顔を出した……