「 あれ?
くーちゃん?」
突然、後ろからそう声が上がった。
反射的に振り向くと、そこには佐伯さんが立っていた…
「にゃー 」
突然の事に固まる私をよそに、猫は私の横をすり抜けて佐伯さんのところに駆けて行った…
佐伯さんは足下にすり寄る猫を抱き上げる。
「 けっこう汚れたね、シャンプーしようか。」
猫を抱き上げた佐伯さんが、そう猫に話し掛けていた
私はそんな様子をぼーっと眺めているだけ。
…なんだかんだで、私は彼に対してまだぎこちない。
以前の私は、どんな風に彼に話し掛けてただろう……
「 …そっ、その子、佐伯さんの猫ですか? 」
なんとか話し掛けようとしても、ぎこちない言葉。
上手く笑うことができない…
そんな私に対し、彼はいつも通りに接してくれる…
「 いえ。この子‥くーちゃんは、さくら荘の猫なんです。
と言っても、かなり気まぐれだからさくら荘に居ないことの方が多いんですけどね… 」
「 …そうなんですか。」
"くーちゃん"と呼ばれた猫は、佐伯さんの腕のなかで心地良さそうに欠伸を零した…
そんな風に私も佐伯さんの前でもリラックス出来たらいいのに…と、目の前の猫が羨ましく思えた…。