電話を終えた携帯電話の電源を切り、布団に深く体を沈めた…
そんな俺の上に座る幽霊。
『 …今日のアンタ、変だよ。』
「 …あ?」
『 元気がない。』
「 …そうか?」
『 そうだよ。
それに、私が話し掛けても普通に返事してるし。いつも無視するくせに… 』
「 ……そうだな、変だな。」
なぜか、コイツとの静かな会話が妙に心地良く感じた…。
そんな自分が変だと思いながらも、俺は初めてこの幽霊に向けて言葉を紡いだ
「 …最近さ、仕事をするのがどんどん苦しくなって気がするんだ…。」
『 …どうしてそう思うの? 』
「 どうしてだろうな…… 」
…言いながら俺は瞼を閉じた。
本当は、理由なんて判りきっていた。アイツとの関係が終わってからだ……
仕事に一生懸命でいられたのは、早く一人前の男になってアイツと一緒になりたかったからだ。
けれど、
仕事ばかりに優先して、近くに居たアイツを俺は蔑ろにしてしまった…
最後に唇を交わしたのはいつだろう…
最後に体を重ねたのはいつだろう……
いつの間にか性欲を満たすためだけの行為になってしまったせいで、アイツの体温を思い出す事も出来なくなっていた……
心が離れて行くのも当然だろう。
気付いた時にはもう遅くて、俺に出来る事なんて別れの言葉を告げる事だけだった……