そうして、無言のまま僕らがさくら荘まで帰ってくると、

僕の部屋のドアの前に人影があった……



一瞬 さくら荘に出る幽霊かと思ったその人影は、


「 …と〜るぅ〜っ!!」

と、僕の姿を見るなり、抱きついて来た……




「 …ナナっ!?」


僕はその人物を見て声を上げた。
抱きついて来たその人物は幽霊ではなく、ナナだった。



「 …徹っ、

どうしよう…っ、私……っ」


「 ナナ…、どうしたの!? 」

泣きついてくる彼女のただ事ではない雰囲気に、僕は思わず彼女の頭を撫でて落ち着かせようとする……




「 あっ…、」

今まで黙っていた森永さんが、小さく声を上げた…



「 …あ、あのっ、

……今日はありあとうございました。おやすみなさい。」


早口でそう言った彼女は、僕が返事をするより早く自分の部屋に入って行った……





「 ………。」



「 ……ごめんっ 」

ナナが小さく呟いた……




「 …いいよ。別に… 」



「 …うそつき

…私のこと、ウザいって思ったんでしょ…… 」


「 思ってない。」



「 ウソだっ!!

絶対思ったくせにっ!!」


「 …ナナ、近所迷惑。」


「 ウザいって思ってるならはっきり言いなさいよっ!!」


「 ……だから、近所迷惑だって… 」



「 迷惑なんでしょ!?ウザイんでしょっ!?」




まったく言葉が通じない彼女に、思わずため息が零れた……

すると、それも彼女にしてみればウザいと思われていると解釈されたようで、



「 …やっぱり、ウザイんだ……

私なんて、この世に要らないんだ……っ、」


と、再び泣き始めた……