ギア・ドール


「まぁ、あいつもけっこうアホだからな・・・・・・。」


 紫煙と共に声が出る。


 慣性の法則を受けて、風がないのに紫煙が自分の顔にかかった。


「よく分かるわね?」


「伊達に二年も一緒に暮らしとらん・・・。」


「そっか・・・。」


 それだけを口にすると、菫は黙り込んでしまう。


「・・・・・・・・」


 海人も、それに対して返す言葉がみつからずに、それに続く。


 曇り空の元、何も語らない黄土色と紫色をした2体の巨人が空を飛ぶ。


 この世界ではおよそ珍しくない風景。


 視界には映らないが、5キロ先にも同じようにギア・ドールが飛んでいるコトを皐月の索敵画面は映している。


 砂漠を超え、彼らの下に広がるのは、決して清掃されることのない、この世界で最も汚い街、スラム。


 本来、墜落したら危険な場所(主に住宅地)での、ギア・ドールの低空飛行は、緊急時を抜かせば、禁止されているのだが、法律の存在しないスラムでそんなものを守る者はいない・・・。