ギア・ドール

『あんたにしては珍しいじゃない?戦闘は30分も前に終わっているというのにさ・・・』


 情報は早さが命。


 戦場跡に行くにしても出遅れるだけで、ライバルたちに金目の物を全て奪われてしまう。


 確かに、情報屋のアルクにしては、珍しいこともあるものだ。


「天才にもミスはありますよ・・・。わざわざそんなことを言うために、俺に変わったっていうの?」


 怒気のこもったアルクの声


 ・・・まったく、よく言うものだ。


『天才はミスをしないから天才って呼ばれるんじゃなかったの?・・・まぁ、そんなことよりニュース聞いた?』


 アルクは、自分が見だしたニュースに顔を向ける。


 数秒間眺めた後、再び電話のほうに顔を向けなおして。


「たった今。」


『虎神の防衛成功・・・。10万、賭けていたよね?』


 そんな話、俺は聞いてないぞ。


「・・・忘れた。」


 また、そんな無意味なウソを付く・・・。


『慰謝料を含めて、残り480万・・・。また借金が増えましたな、アルクさん?』


 アルクと菫が離婚したのが今から2年前。


 自分がちょうど、この家に来る少し前だったらしい。


 理由は分からない。


 しかし当然のことながら法律の存在しないスラムでは、婚姻届も離婚届も存在しない。


 彼らの扱いは、純粋に同棲していたカップルが別れて、別居を始めた程度。


 それでも、お互いにしょっちゅう連絡も取り合っているし、飲みにも行っている。


 詳しく追求はしたりはしないが、泊りにも言っているようだ。


 まだ付き合っていると言ってもいいような気がするのだが・・・。